能のあらすじ・見どころ Summary and Highlights of Noh 鶴亀 日本語
あらすじ
舞台は古代中国、唐の時代。玄宗皇帝(シテ)により月宮殿(月にある宮殿を模した皇帝の宮殿)で初春の儀式が行われることになり、皆に参内するよう役人(アイ)が触れて回ります。お触れが済むと、皇帝が多くの臣下たち(ワキ・ワキツレ)を引き連れて現われ、玉座に着きます。そこへ宮殿の池に住む鶴と亀(ツレ。子方になる場合も)が現われ、例年通り皇帝の長寿と治世の繁栄をことほぎながら舞を捧げます。鶴と亀の舞に興じて気分の乗ってきた皇帝もみずから舞を舞います。皇帝の舞に合わせて臣下たちも「霓裳羽衣」という曲を演奏します。やがて舞い終えた皇帝は、長生殿へと帰って行きました。
見どころ
本曲のみどころは、鶴亀による舞と玄宗皇帝による舞です。鶴と亀は、それぞれに鶴と亀をかたどった冠を頭につけて舞います。ここで舞われるのは「中ノ舞」と呼ばれる舞で、華やかな場面にも舞われる舞です。太鼓も入りいっそう軽やかな元気のよい舞となり、祝いの場にふさわしい雰囲気を表現します。玄宗皇帝の舞の後に、謡に出てくる「霓裳羽衣」の曲は皇帝みずから作ったとされるものです。伝説によると、皇帝が月の都へ上り、月世界の天女の演奏する舞曲を見、下界に帰ってきてから作ったとされています。皇帝が舞うのは「楽」と呼ばれる舞で、足拍子を踏みながら次第にテンポを上げていくリズム豊かな舞です。この二つの舞により華やかでおめでたい雰囲気に包まれます。
本曲は脇能(翁の後に演じられる能)の曲で、他の脇能の曲と同様にストーリーに凝らず、めでたさを強調する作品となっています。鶴と亀が登場し、皇帝は「長生殿」へ帰っていくなど作品全体は一貫して長寿をテーマとして描いています。皇帝の長寿により、優れた治世が続き、平和な世が続くことをことほいでいるのです。こうしためでたい雰囲気と、皇帝の威厳あるおごそかな舞をお楽しみください。